
セキセイインコ男の末路 続編
かつて、ある男がいた。真面目に働き、真剣に生きた。しかし彼は報われなかった。
嘘をつく人間たち、ルールを破る者たち、感情に振り回される社会の中で、彼の人間不信は次第に膨らんでいった。
そんな彼の心を救ったのが、一羽のセキセイインコだった。
その鳥は無垢で、裏切らず、毎朝ケージ越しに彼を見つめて「ピッ」と鳴いた。
「次は、セキセイインコに生まれ変わりたい」
それが、彼の遺した最後の言葉だった。
数十年後 ― ペットショップの片隅で
都会の片隅にある小さなペットショップ。ケージの中で、数羽のセキセイインコの雛が並んでいた。
その中に、どこか哀しげな目をした一羽がいた。彼だった。
もちろん記憶はすべて失われている。だけど、そのインコだけが、人間の指先にそっと寄ってきて、じっと見つめることがあった。
他の雛たちが警戒してバタつく中、彼は静かに寄り添うように懐いていた。
インコあるある:でもちょっと違う彼
- 指に乗るのがやけに上手。
- 他のインコに比べて人間の目をよく見ている。
- ケージ越しに人の話をじっと聞いているような仕草。
- 夜、誰もいない店内で「オツカレサマ」と呟くような声が録音された。
そしてある日、彼を迎えたのは…
その日、一人の中年女性が来店した。名前は「美咲」。彼女は心に傷を抱え、静かなパートナーを探していた。
ケージの中で彼女の指にすっと乗ったのは、あの哀しげな目のインコだった。
「この子、不思議…目が優しい」
それが、彼の新たな人生(鳥生)のはじまりだった。
言葉はなくとも、寄り添える心がある
やがて彼女は、彼に「ルリ」と名付けた。
美咲が泣く夜、ルリはそっと肩に乗り、じっと彼女を見守った。
彼はもう人間ではない。けれど、今度は違う。
嘘も、競争もない。ただ静かに、誰かのそばにいることで、自分の存在を感じていた。
鳥としての生を得た彼は、ようやく「愛される」という意味を知る。
それは、かつての彼が人間として欲していた、ただひとつの真実だった。