野生のセキセイインコたち:乾いた風を生きる

赤く焼けたオーストラリアの大地。
気温は40度を超え、空気さえも音を立てずに揺れていた。
そんな過酷な環境の中で、彼らは今日も生きている。セキセイインコの群れだ。

朝、太陽が地平線の向こうから顔を出す頃、群れは一斉に空を舞う。
乾いた地面に落ちる影は、数十羽、あるいは百を超える。
水場を探しての移動は、彼らの生命線。
野生のセキセイインコは、飛ぶことで生き延びる。

日中は木の陰で身を寄せ合い、体温の上昇を防ぐ。
仲間との距離感は絶妙で、互いの羽が触れることはないが、気配だけは常に感じている。
一羽が警戒の声を発すれば、全羽が即座に反応する。
捕食者に対する防衛は、「集団であること」そのものなのだ。

夕方、水場を見つけた群れは歓声のように鳴きながら降下する。
砂と熱にまみれた羽を、ほんのわずかな水で清める時間は貴重だ。
小さな体の中に溜まった一日の熱が、ほんの数滴の水で洗い流されていく。

夜。空が赤から黒へと移ろう頃、群れはまた一つの木に集まる。
枝に止まったまま目を閉じる。
今日を生き延びたことに、特別な意味はない。
明日もまた、同じように空を渡るだけだ。
だがその繰り返しが、彼らの歴史であり、証である。

—乾燥した大地に、命の色を残して。
野生のセキセイインコたちは、今日も空を翔けていく。