
飼い鳥に起こる「金属中毒」とは何か
小鳥、特に セキセイインコ のようなインコ類は、小さな体と強いくちばしを持ち、「口でかじる」「ついばんで調べる」という習性があります。もし誤って有害な金属やその破片、錆びた金属片などを飲み込んでしまうと、体内で重金属が溶け出し、消化器・神経・呼吸などに重いダメージを与える場合があります。これが「金属中毒」です。
金属中毒は少量でもインコの小さな体には大きな負担になりやすく、食欲不振や体重減少、吐き気、異常な便、神経症状、ひどければけいれんや麻痺、最悪の場合は命に関わることもあります。{index=2}
身近な要注意アイテム – なぜ危険?
① 100円均一のおもちゃや小物
100円ショップなどで手に入る鈴やメタルパーツ付きの小物類は、一見インコのおもちゃとしても使えそうですが、非常に危険です。金属の表面メッキや塗装がされていても、インコがかじることで塗装が剥がれ、金属自体を削り取って飲み込む可能性があります。特に鉛・亜鉛・銅などが使用されている場合、中毒につながるリスクが高いといわれています。
また、100円ショップのおもちゃはそもそも鳥用に設計されたものではなく、金属素材や塗装の安全性が確保されていない場合が多いため、インコを飼う環境では極力避けるべきです。
② 錆びてきた金属製品 — 錆びや劣化は危険シグナル
金属製品は新品のメッキやコーティングがされていても、時間とともに錆びたり表面が削れたりして、インコがかじった際に金属片が剥がれやすくなります。特にケージのワイヤー、金属製の止まり木、飾り金具、鈴などは、錆びがあるものは要注意です。
錆びた金属をかじって誤飲すると、砂嚢(インコの胃の一部)に溜まり、そこから徐々に溶け出した重金属が体内に吸収され、深刻な症状を引き起こす可能性があります。
③ 陶器製の水入れ — 意外な落とし穴
一見安全そうに見える陶器の水入れですが、注意が必要です。陶器は割れた際に小さな破片をインコが飲み込んでしまうリスクがあります。また、陶器の釉薬に金属成分が含まれている場合、「ひび割れ」や「欠け」が起こると、その金属成分が露出・剥離して、有害物質になる可能性があります。
陶器製の水入れを使う場合は、割れや欠けがないか定期的にチェックし、欠けが見つかったらすぐ交換するようにしましょう。ステンレスや鳥用に安全とされる素材の水入れに替えるのが安心です。{index=7}
④ 衣服や靴についた外の砂 — 思わぬ金属粒や有害物を含む場合も
人間が外出先で履いた靴や衣服に付着した砂や土には、金属片や金属粉末、小さな錆びた破片などが混ざっている可能性があります。放鳥中にインコがその砂やゴミをついばんでしまうと、誤飲の恐れがあります。特にアスファルトの割れ目、古い金属製品の近く、工事現場付近などでは注意が必要です。
知らないうちに持ち込まれた小さな金属片が原因で金属中毒になることもあるので、室内に持ち込む際は衣服の砂を払い落とすなど、清潔な環境づくりを心がけましょう。
金属中毒の症状と危険性
金属中毒の主な症状は、食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、異常便(濃い緑や黒っぽい便など)、多飲、多尿、体重減少などの消化器症状です。
さらに進行すると、神経症状(けいれん、麻痺、首を傾ける、ぐるぐる回るなど)、呼吸困難、貧血などが見られることがあります。最悪の場合、命に関わることも少なくありません。
小さな異変でも、インコの体では危険なサイン。普段から体重や食欲、便の色や量、行動などをよく観察し、「いつもと違う」と感じたらすぐに獣医師に相談することが大切です。
予防のためにできる対策
安全なケージ・おもちゃ選びを徹底する
おもちゃやケージを選ぶときは、「鳥用」「安全素材」「ステンレス製」「塗装なし」といった条件を満たすものを選びましょう。特に金属部分があるものは、メッキや塗装の剥がれ、錆びがないかこまめにチェックしてください。
古い道具や100円ショップの安価な金属製品を鳥用に流用するのは非常に危険です。
部屋の中の危険物を把握・除去する
放鳥時は、床やテーブルの上、床下などに小さな金属片や錆びたもの、古い金属製品、金属を含むアクセサリーなどが落ちていないか確認してください。インコが自由にかじったりついばめる環境にはしないようにしましょう。特に、カーテンのウエイト、古い鍵、錆びた雑貨などは危険です。
水入れ・餌入れは安全な素材に替える
陶器製の水入れ・餌入れを使う場合は、ひび割れや欠けがないか定期的にチェックし、問題があればすぐに交換すること。できればステンレス製や鳥用に安全とされる素材のものを使用するのが望ましいです。
衣服・靴の汚れや外の砂をケージの近くに持ち込まない
外出先から帰った後、衣服や靴の裏についた土砂を払う、洗うなどの習慣をつけることで、誤飲のリスクを減らせます。インコが放鳥中に近づく場所に、外で使ったものを置かないよう気をつけましょう。
もし金属中毒が疑われたら — 早めの対応が命を救う
万が一、インコが金属片を飲み込んだ可能性がある、あるいは体調が急に悪くなった場合は、ためらわずに鳥を診られる動物病院を受診してください。金属中毒の診断には、レントゲン検査や血液検査、便や尿の検査などが必要です。
治療法としては、誤って取り込んだ金属を体外へ排出させるための「キレート療法」が行われることがあります。しかし、症状が進んでいる場合は回復が難しいこともあるので、何よりも「予防」が重要です。
まとめ|普段からの“少しの注意”でインコの命を守る
私たちの身の回りには、思わぬ形でインコにとって危険な金属があふれています。100円均一のおもちゃや小物、錆びた金属製品、陶器の水入れ、外から持ち込んだ砂。どれも普段は気にしないようなものかもしれませんが、インコの小さな体にとっては大きな脅威となる可能性があります。
だからこそ、飼い主として最も大切なのは、「安全な素材を選ぶ」「危険になりそうなものを置かない」「異変に気づいたらすぐ対処する」という意識。ちょっとした油断が、インコの命に関わる重大な事故につながることもあるのです。
もし安全性に不安があるなら、鳥用ケージ・おもちゃ・水入れにこだわる、放鳥時に部屋を整理するなど、環境を見直してみてください。そして、インコが「いつもどおり」でいるか、毎日の観察も忘れずに。大切な鳥の健康を守るために、小さな注意を積み重ねましょう。
